起業というと、自分のアイデアやビジョンを実現するために、自ら事業を立ち上げることをイメージする人が多いでしょう。しかし、起業にはそれだけではなく、経営や財務、法律などの知識やスキルも必要です。
そこで、起業に役立つ資格を14個紹介します。これらの資格は、経営者としての能力を高めるだけでなく、独立開業する際にも有利になるものです。ぜひ参考にしてください。
関連記事:起業するには何をしたらいい?方法や流れ、手続きなど事前準備を解説
起業に資格は必要?いらない?
一般的に、起業には資格は必要ありません。しかし、資格を持っていると、起業の成功率や効率が高まる可能性があります。
起業前に資格を取得するメリット
資格を取得することには、以下のようなメリットがあります。
- 専門知識やスキルを身につけることができる
- 信頼性やブランディングにつながる
- 顧客や取引先との交渉力が高まる
- 助成金や補助金などの制度を利用できる
- 税金や保険料などの負担を軽減できる
特に、経営や財務、法律や行政などの分野では、資格を持っていると、起業に必要な知識や手続きをスムーズに進めることができます。
どのような資格が起業に役立つのか
起業に役立つ資格は、自分の事業内容や目標によって異なります。しかし、大きく分けて、経営者向けと経営者兼プレイヤー向けの2種類に分類できます。
経営者向けの資格とは、経営全般に関わる資格で、事業計画や経営戦略、財務管理や法務対策などをサポートする資格です。これらの資格は、自分だけでなく他の人にも指導やアドバイスができるようになります。
経営者兼プレイヤー向けの資格とは、自分の事業分野に特化した資格で、自分自身がサービスや商品を提供する際に必要な資格です。これらの資格は、自分の専門性や差別化を高めることができます。
【経営者向け】起業に役立つ資格6選
ここでは、経営者向けの企業に役立つ資格を紹介します。
経営・財務に関する資格
起業するときには、経営や財務の知識が必要です。自分の事業の収支や資金繰りを把握し、適切な判断を下すことができれば、ビジネスの成功に近づきます。また、税金や保険などの法律的な手続きもスムーズに行えるようになります。ここでは、経営や財務に関する資格の中から、起業に役立つものを3つ紹介します。
ファイナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナー(FP)は、個人や法人の資産や収入に関する相談に答える専門家です。FPの資格を持つと、自分の事業の財務計画を立てたり、投資や節税などのアドバイスを受けたりできます。また、FPはお客様から信頼される職業としても知られており、自分のサービスや商品を提供する際にも有利になります。
FPの資格は、日本FP協会(JAFP)や日本ファイナンシャル・プランナーズ協会(JFPA)などが認定しており、合格率は試験の種類によって異なります。例えば、2023年1月におけるFP2級の学科試験の合格率は日本FP協会が56.12%、金融財政事情研究会が29.07%でした。一方、FP3級の合格率は約40%〜80%、FP2級は約20%〜60%、FP1級は約7%〜18%とされています。
日商簿記検定
日商簿記検定は、日本商工会議所が主催する簿記の検定試験です。簿記とは、企業の収入や支出を記録し、財務状況を分析する方法です。日商簿記検定は、1級から3級までありますが、起業に役立つのは2級以上です。2級以上の資格を持つと、自分の事業の会計処理や決算書作成ができるようになります。また、税務署や銀行などからも信用されやすくなります。
日商簿記検定は年2回行われており、合格率は2級で約15~30%、1級で約10%程度です。
税理士
税理士は、税法に関する専門家です。税理士の資格を持つと、自分の事業の税金計算や申告ができるようになります。また、税務調査や税務訴訟などの対応もできるようになります。税理士はお客様からも高いニーズがありますが、その分競争も激しい職業です。
税理士の資格は、国家試験である税理士試験に合格する必要があります。試験は年1回行われており、2022年(令和4年度)の税理士試験の合格率は19.5%でした。
法律・行政に関する資格
起業には、法律や行政の知識が必要です。契約書の作成や確定申告、労働法や消費者法など、さまざまな分野で法的な問題に対処する必要があります。また、行政機関とのやりとりも多くなります。そこで、法律・行政に関する資格を取得することで、起業家としての信頼性や専門性を高めることができます。ここでは、起業に役立つ法律・行政に関する資格を3つ紹介します。
中小企業診断士
中小企業診断士は、中小企業の経営に関する専門知識を持ち、経営課題の発見や解決策の提案を行う資格です。中小企業診断士は、経営計画の作成や財務分析、マーケティングや人事管理など、幅広い分野で中小企業の経営支援を行うことができます。また、中小企業診断士は、公的機関や金融機関との連携も強く、助成金や融資などの情報提供や手続きのサポートも行うことができます。
中小企業診断士は、自ら起業する場合や他社の経営コンサルタントとして活躍する場合にも有利な資格です。
ビジネス実務法務検定
ビジネス実務法務検定は、ビジネスにおける法律の基礎知識を測る検定試験です。ビジネス実務法務検定では、契約法や会社法、労働法や消費者法など、ビジネスに関連する主要な法律分野が出題されます。ビジネス実務法務検定を取得することで、起業家として必要な法律知識を身につけることができます。また、ビジネス実務法務検定は、契約書の作成やチェック、トラブル対応などの実務能力も評価されます。
ビジネス実務法務検定は、自社のリスク管理やコンプライアンスを強化するためにも有用な資格です。
行政書士
行政書士は、行政手続きに関する専門知識を持ち、代理申請や書類作成などを行う資格です。行政書士は、起業に必要な届出や許可申請などの手続きを代行することができます。また、行政書士は、税務や社会保険などの分野でも相談やサポートを行うことができます。
行政書士は、自ら起業する場合や他社の行政手続き代行サービスとして活躍する場合にも有利な資格です。
【経営者兼プレイヤー向け】起業に役立つ資格8選
ここからは、業界別に、経営者兼プレイヤーに役立つ資格を紹介します。
不動産業界
不動産業界は、住宅やオフィスなどの物件の売買や賃貸、管理などを行う業界です。不動産業界で起業するには、以下のような資格が役立ちます。
宅地建物取引士
不動産業界で起業するなら、宅地建物取引士の資格がおすすめです。宅地建物取引士は、不動産の売買や賃貸の仲介に必要な国家資格で、保有していることで不動産業界での信頼性や専門性を高められるなどのメリットがあります。
しかし、宅地建物取引士の試験は簡単ではありません。令和4年度の試験では、受験者数は226,048人でしたが、合格者数は38,525人で、合格率は17.0%でした。合格基準点は50点満点中36点で、約70%以上の正答率が必要でした。過去10年間の平均合格率も16.4%と低い水準です。
不動産鑑定士
不動産鑑定士とは、不動産の価値を客観的に評価する国家資格です。不動産の価値を正確に算出できることから、不動産売買や賃貸、投資などの判断材料となります。資格を保有することで、専門性や権威性が高まり、公的機関や金融機関などからの依頼が増えることも考えられます。
不動産鑑定士試験の合格率は、短答式試験が例年32〜37%、論文式試験が例年14〜18%であり、短答と論文をどちらも一発合格する場合の合格率は例年4〜7%です。
IT業界
IT業界は、コンピューターやインターネットなどの情報技術を用いてサービスやソフトウェアを開発・提供する業界です。IT業界で起業するには、以下のような資格が役立ちます。
基本情報技術者
基本情報技術者とは、IT分野の基礎的な知識や技能を持つ人材を認定する国家資格です。資格を保有することで、ITの基礎知識やスキルが身につく、IT関連の他資格の取得に向けてのステップになるといったメリットがあります。
基本情報技術者試験の合格率は40%から50%の間で遷移しています。以前は平均して20%から30%程度の合格率だったことが示されており、最近の合格率が上昇していることがわかります。
ITパスポート
ITパスポートとは、ITに関する幅広い知識を持つ人材を認定する国家資格です。資格を保有することで、ITに関する知識の証明となります。
ITパスポート試験の難易度は一般的に高くなく、合格率は50%前後とされています。ITパスポート試験は、ITに関する基礎的な知識やスキルを証明する試験であり、IT業界未経験者にも比較的取り組みやすい試験といえるでしょう。
飲食業界
飲食業界は、人々の生活に欠かせないサービスを提供する分野です。しかし、食品の安全や衛生、調理の技術など、高いレベルの知識やスキルが求められます。起業するには、以下のような資格が役立つでしょう。
食品衛生責任者
食品衛生責任者とは、食品の製造・加工・販売・提供などを行う事業者において、食品衛生に関する管理や指導を行う人のことです。食品衛生責任者は、都道府県知事から委任を受ける必要があります。委任を受けるには、食品衛生責任者講習を受講し、修了証を取得する必要があります。
食品衛生責任者試験の合格率は、第一種で約45%、第二種で約53%と、国家資格としては取得しやすい資格といえます。
調理師免許
調理師免許とは、調理師法に基づいて国家資格として定められたもので、調理師学校を卒業するか、調理師試験に合格することで取得できます。調理師免許は一般的な飲食店では必要ないものの、資格を持つことは、飲食業界で起業する際に大きなメリットになります。調理師免許は、調理の基本的な知識や技術を身につけた証明となるからです。
調理師免許試験の合格率は年度や都道府県によって異なりますが、一般的には60%から70%前後とされています。
美容業界
美容業界は、人々の美しさや健康をサポートする分野です。しかし、美容技術や知識だけではなく、法律や衛生などにも詳しくなる必要があります。起業するには、以下のような資格が役立つでしょう。
美容師免許・理容師免許
美容師免許・理容師免許とは、美容師法・理容師法に基づいて国家資格として定められたもので、美容師学校・理容師学校を卒業するか、美容師試験・理容師試験に合格することで取得できます。美容師免許・理容師免許は、美容室・理容室などで美容や理容の業務を行う場合に必要です。また、美容師免許・理容師免許を持つことで、お客様に安心と信頼を与えることができますし、行政からの指導や検査にも対応しやすくなります。
美容師免許の合格率は60~80%、理容師免許の合格率は60~70%といわれています。
日本エステティック協会認定資格
日本エステティック協会認定資格とは、日本エステティック協会が認定する民間資格のことで、エステティシャンの技術や知識を評価するものです。日本エステティック協会認定資格を持つことで、お客様に安心と信頼を与えることができますし、業界からの評価も高まります。
日本エステティック協会認定資格は「AJESTHE認定エステティシャン」「AEA上級認定エステティシャン」など複数の資格を認定しており、合格率は資格によって異なります。
資格を活用して起業を有利に進めよう
起業に役立つ資格は、経営者のタイプや業界に応じて選ぶべきです。経営者向けの資格は、会社運営に必要な基礎知識を学べます。経営者兼プレイヤー向けの資格は、特定分野での専門知識や技術を身につけられます。資格を持つことで、起業の成功率を高めることができます。
資格を活用して起業を有利に進めましょう。