女性が自己資金なしで起業するには|活用すべき融資制度と審査のコツを紹介

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起業するときに必要なのは、アイデアやビジョンだけではありません。資金も重要な要素です。そこでこの記事では、女性が自己資金なしで起業するために知っておくべき融資制度と、融資審査を成功させるためのコツを紹介します。

関連記事:起業にかかる費用はどのくらい?費用目安と資金調達方法を解説

自己資金なしの女性でも起業時に融資を受けられるのか

はじめに、自己資金なしの女性でも起業時に融資を受けることは可能です。自己資金がないと融資審査に通りにくいというイメージがありますが、実際には自己資金なしでも融資制度を利用すれば起業することはできます。

ただし、融資の審査には多くの要因が関わるため、事業計画の質や起業家の経験、市場での可能性なども重要視されます。また、自己資金が全くない場合でも、創業に向けた資金計画を立てることが望ましいでしょう。

自己資金の重要性と定義

自己資金なしでも融資は受けられると述べましたが、自己資金があると融資が受けやすくなることはたしかです。なぜなら、自己資金があることは、事業に対する信頼や意欲を示すことになるからです。ここでは、自己資金として認められるものと、認められないものについてそれぞれ解説します。

自己資金として認められるもの(預貯金、資産の売却益など)

自己資金として認められるものは、以下のようなものです。

  • 預貯金:銀行や郵便局などに預けているお金。定期預金や普通預金などがある
  • 資産の売却益:不動産や株式などの資産を売却して得た利益。売却した時点で確定したものであれば、自己資金として認められる
  • 退職金:会社を退職した際に受け取るお金。退職金は一時所得として課税されるが、起業に使う場合は非課税となる
  • 贈与:親や知人からもらったお金。贈与は贈与税がかかるが、起業に使う場合は非課税となる

自己資金として認められないもの(他から借りた資金、タンス預金など)

自己資金として認められないものは、以下のようなものです。

  • 他から借りた資金:銀行や消費者金融などから借りたお金。他から借りたお金は、返済義務があるため、自己資金とはみなされない
  • タンス預金:家や会社に保管している現金。証明書類がないことから自己資金とはみなされない
  • 未確定の収入:将来的に得られる可能性のある収入(例えば、売上や契約など)。未確定の収入は、実際に手に入るかどうかわからないことから、自己資金とはみなされない

女性の起業率と廃業率の現状

日本政策金融公庫の「2022年度新規開業実態調査」によると、新規開業した企業のうち、女性経営者の割合は24.5%と過去最高を記録しました。この割合は年々増加傾向にあり、女性が起業しやすい環境が整備されつつあることが伺えます。

一方、日本の女性起業家の廃業率は男性よりも高い傾向にあります。総務省統計局のデータによると、男性の廃業率が11.8%に対して女性の廃業率は22.9%となっており、女性の方が約2倍の廃業率であることがわかりました。女性起業家の廃業率が高い理由としては、起業前の就業経験が少ないことや、管理職経験の乏しさ、起業前の就業期間の短さなどが挙げられています。

参考:2022年度新規開業実態調査|日本政策金融公庫

関連記事:女性起業家の廃業率は?|女性起業が難しい理由と失敗を回避するポイント

女性起業家が自己資金なしで申し込みできる融資制度

自己資金がない女性でも起業するためには、融資制度を上手に活用することが重要です。しかし、融資制度にはさまざまな種類があり、どれが自分に合っているのかわからないという方も多いでしょう。そこで、この記事では、女性に優しい融資制度を紹介します。

中小企業経営力強化資金

中小企業経営力強化資金とは、中小企業庁が実施している融資制度の一つで、中小企業や個人事業主が経営力を高めるための投資や設備投資などに利用できるものです。この制度の詳細は、以下の通りです。

  • 資金の使い道:事業の設備資金や運転資金
  • 融資限度額:最高7億2千万円(運転資金の上限は2億5千万円)
  • 融資期間:設備資金は最長15年(据置期間2年以内)、運転資金は最長7年(据置期間1年以内)
  • 利率:0.80%~(女性や若者、シニア起業家には0.60%~の特別利率が適用される場合あり)
  • 対象要件:経営革新や異分野の中小企業との連携で新たな市場を創出しようとする方、事業計画の策定と認定経営革新等支援機関からの指導・助言を受けている方

参考:中小企業経営力強化資金|日本政策金融公庫

新創業融資制度の特例

日本政策金融公庫が提供する新創業融資制度では、創業資金総額の10分の1以上の自己資金が通常必要ですが、特例として以下の条件に該当する場合は自己資金なしでも申し込みが可能です

  • お勤めの経験がある企業と同じ業種の事業を始める方で、当該業種の企業に通算して5年以上お勤めの方
  • 大学等で修得した技能等と密接に関連した職種に継続して2年以上お勤めの方で、その職種と密接に関連した業種の事業を始める方
  • 創業塾や創業セミナーなど(産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援等事業)(注1)を受けて事業を始める方
  • 民間金融機関(注2)と公庫による協調融資を受けて事業を始める方
  • 技術・ノウハウ等に新規性が見られる方(注3)
  • 新商品・新役務の事業化に向けた研究・開発、試作販売を実施するため、商品の生産や役務の提供に6ヵ月以上を要し、かつ3事業年度以内に収支の黒字化が見込める方
  • 「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」の適用予定の方
新創業融資制度|日本政策金融公庫

この制度における融資の貸付限度額は300万円で、自己資金要件は新創業融資制度と同じです。ただし、融資の申し込みから実際に資金が支給されるまでの期間は、場合によっては1〜2ヶ月かかる場合があるため、開業時に即時資金を必要とする場合は注意が必要です。

参考:新創業融資制度|日本政策金融公庫

女性・若者/シニア起業家支援資金

「女性・若者/シニア起業家支援資金」は、日本政策金融公庫が提供するもので、女性や若者(35歳以下)、シニア(55歳以上)の起業家に対して融資を行います。制度の詳細は下記のとおりです。

  • 対象者:女性(年齢制限なし)、35歳未満の若者、55歳以上のシニアで、新規開業から概ね7年以内の方
  • 資金用途:開業前後に必要な設備資金や長期運転資金
  • 貸付限度額:最大7億2000万円(うち運転資金2億5000万円)
  • 返済期間:設備資金は20年以内、運転資金は7年以内(それぞれ据置期間2年以内)

参考:女性、若者/シニア起業家支援資金|日本政策金融公庫

資本性ローン制度

資本性ローン制度とは、新規開業資金や女性、若者/シニア起業家支援資金などの融資を受ける際に適用可能な特例制度で、融資を金融検査上「自己資本」とみなすことができる点が最大の特徴です。資本性ローン制度の詳細は以下の通りです。

  • 対象:新規開業資金、女性、若者/シニア起業家支援資金などの融資対象者。
  • 条件:技術・ノウハウに新規性があること、地域経済の活性化に貢献する事業、所得税等の完納など。
  • 融資金額と返済期間:最大4000万円、返済期間は5年1カ月以上15年以内。
  • 返済方法:利息のみの支払いで、元金は期限一括返済。
  • 利率:融資期間と売上高減価償却前経常利益率によって変動。

参考:挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)|日本政策金融公庫

女性が融資審査を成功させるためのポイント

ここからは、女性が融資審査を成功させるためのポイントを解説します。

自己資金がない場合の対策

自己資金がない女性起業家は、融資審査において不利な立場にあります。しかし、それを補う方法はいくつかあります。ここでは、自己資金がない場合に有効な対策を4つ紹介します。

親や知人からの贈与の活用

親や知人からの贈与は、自己資金として認められる場合があります。ただし、贈与税の申告や証明書の提出など、手続きが必要です。また、贈与された金額によっては、贈与税が発生する可能性もあります。そのため、事前に税務署や税理士に相談することをおすすめします。

他者からの出資の利用

他者からの出資は、自己資金として認められる場合があります。ただし、出資者との関係や出資条件などを明確にする必要があります。また、出資者には株式や役員報酬などの対価を支払う必要があります。そのため、出資者との契約書や株主名簿などの書類を用意することをおすすめします。

現物出資の利用

現物出資とは、現金以外の財産(土地や建物、機械や備品など)を会社に持ち込むことです。現物出資は、自己資金として認められる場合があります。ただし、現物出資した財産の評価額や譲渡価格などを証明する必要があります。また、現物出資した財産には固定資産税や登録免許税などの税金がかかる可能性もあります。そのため、事前に不動産鑑定士や税理士に相談することをおすすめします。

担保の提供

担保とは、借りたお金を返せなくなった場合に債権者に渡す財産のことです。担保を提供することで、融資審査に有利になる場合があります。担保には自分や家族の財産だけでなく、他人から借りた財産も使えますが、その場合は、貸主から担保提供の同意書をもらう必要があります。また、担保にした財産は債権者に差し押さえられる可能性もあります。そのため、担保提供のリスクを十分に考慮することが重要です。

女性起業家のための融資審査のコツ

女性が自己資金なしで起業するには、融資審査をクリアする必要があります。ここでは、女性に向いている業種での起業と、女性ならではの販促経路やインフルエンサー力の活用について紹介します。

女性に向いている業種での起業

女性が起業する際には、自分の強みや魅力を最大限に発揮できる業種を選ぶことが重要です。そして、その業種でどのように差別化や付加価値を提供できるかを明確にすることで、融資審査でも自信を持ってビジネスプランを説明することができます。

しかし、それだけではなく、市場の需要や競合状況も考慮する必要があります。一般的に、女性は男性よりも感性やセンスに優れていると言われます。そのため、ファッションや美容、インテリアなどのデザインやアート関連の業種や、教育や福祉などの人と関わるサービス業などが女性に向いていると言えます。これらの業種は、女性のニーズや感覚に合わせた商品やサービスを提供することができるでしょう。

女性ならではの販促経路やインフルエンサー力の活用

女性起業家は、自分の強みを活かして、販促経路やインフルエンサー力を最大限に利用することも重要です。これによって、融資審査においても、自分のビジネスプランの魅力や将来性をアピールすることができます。

例えば、SNSやブログなどのオンラインメディアを通じて、自分の商品やサービスについて発信したり、口コミやレビューを集めたりすることができます。これらの方法は、低コストで効果的に顧客を獲得したり、リピート率を高めたりすることができます。

自己資金なしの女性でも融資の申し込みは可能

この記事では、女性が自己資金なしで起業するにはどうすればいいのか、活用すべき融資制度と審査のコツを紹介しました。

自己資金がない場合でも、中小企業経営力強化資金や新創業融資制度の特例など、女性に優しい融資制度を利用することができます。また、みなし自己資金や制度融資など、自己資金の代わりになる方法もあります。

女性が自己資金なしで起業することは決して不可能ではありません。適切な融資制度と審査のコツを知って、夢を実現しましょう。

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