「さ入れ言葉」を知っていますか?
謙譲語のつもりで「読ませていただきます」を「読まさせていただきます」とするのが、「さ入れ言葉」です。
敬語でとりあえず「させていただく」をつけている方は要注意!丁寧な言葉のつもりで、間違った日本語を使っているかも知れません。
「さ入れ言葉」は、ライティングはもちろん、ビジネスでも避けるべき表現です。
この記事では、
- さ入れ言葉の解説
- 簡単な見分け方
を紹介します。ぜひ参考にしてください。
さ入れ言葉の例
さ入れ言葉は、「~せていただく」とすべきところに「さ」を入れてしまう表現です。
- 「読まさせていただく」
- 「書かさせていただく」
- 「行かさせていただく」
- 「休まさせていただく」
さ入れ言葉は、五段活用の動詞で出現します。
助動詞「ない」をつけると前の語の母音がアになる動詞
(例:行か-ない、歌わ-ない、話さ-ない)
「読まァ」「書かァ」と伸ばすと、活用が見分けやすくなります。
ただし、「話させていただく」はさ入れ言葉ではなく、正しい使い方です。
さ入れ言葉にならない「させていただく」のパターン
直前の語が「ア」にならない活用形なら、「~させていただく」で正解です。
- 上一段活用:「ない」をつけると母音がイで終わる動詞
例:着-ない、用い-ない
「着させていただく」
- 下一段活用:「ない」をつけると母音がエで終わる動詞
例:食べ-ない、決め-ない
「食べさせていただく」
- カ変活用:「来る」のみ
「来させていただく」
また、熟語に「させていただく」をつける場合もありますよね。
- 「勉強させていただく」
- 「検討させていただく」
- 「辞退させていただく」
”熟語+させていただく”で取り敢えず敬語の形になってしまうため、つい「さ入れ言葉」を使ってしまうケースも多いのでは?
さ入れ言葉の見分け方
さ入れ言葉は、サ行以外の五段活用で出現します。
よって「させ」がつく動詞の活用形をチェックしていくのが確実です。
しかし、いちいち活用形を考えながら書くのは大変です。そこで、手っ取り早く見分ける方法を紹介します。
「さ」を抜いて音読する
「させていただく」を使ったら、まず「さ」を抜いて読んでみましょう。
- 「書かさせていただく」→「書かせていただく」
さ入れ言葉なら、「さ」を抜いても意味が変らず、違和感もありません。
一方、さ入れで正解の言葉だと、
- 「食べさせていただく」→「食べせていただく」
- 「検討させていただく」→「検討せていただく」
- 「見させていただく」→「見せていただく」
意味が変わったり、文章が成立しなくなったりします。
- 「見させていただく」→目上の人から、あなたに見せようとしている
- 「見せていただく」→あなたが、目上の人にお願いして見せてもらう
どちらも間違いではありませんが、意味が異なります
文章校正ツールは使える?
残念ながら、無料で使える文章校正ツールはさ入れ言葉をほとんど拾いません。
無料の文章校正ツール | 『さ入れ言葉』のチェック精度 |
---|---|
PRUV | 50%ほどの確率で検知する |
Enno | すべて【要チェック】をつける |
文章校正(so-zou) | まったく検知せず |
辛うじてPRUVが拾ってくれる程度でした。
- 有料の校正ツールを頼る
- 自分でチェックする
今のところ、さ入れ言葉は簡単にはつぶせないようです。
さ入れ言葉は間違った敬語
さ入れ言葉は、一番使いそうな「見させてください」でも使用者は約33%と少数派です。
”間違った敬語”という認識が強いため、使用は避けましょう。
- 仕事で使ってしまうと、敬語が使えない稚拙な印象になる
- ライターが文章で使うなら、「させていただく」自体が冗長表現
「読ませていただく」のかわりに「拝読」を使うなど、他の言葉への置き換えも一緒に検討するとよいでしょう。
また文章で使いがちな口語表現に「ら抜き言葉」と「い抜き言葉」があります。ライターなら、覚えておいて損はないですよ!
関連記事:い抜き言葉とは?|例文と見分け方を紹介