「毎日、頑張って仕事をしているのに上司に認めてもらえない」「好きな子には振り向いてもらえない」「このままではダメだ、何とかしたい」とお悩みではありませんか?
その悩み、返報性の法則によって解決するかもしれません。
返報性の法則とは心理学に基づいた法則のひとつで、返報性の原理ともいいます。
今回は返報性の法則について、種類や身近な例をご紹介しながら、正しい活用方法をお伝えします。
間違った使い方をすると逆効果になりますので、ぜひ最後までご確認ください。
返報性の法則とは
人は他人から何かしてもらったときに、お返しをしなければならないという感情が湧きます。
返報性の法則とは、この「お返しをしたい、お返しをしなければならない」という心理のことです。
受けた恩と同等かそれ以上に返さなければという心理が働きますので、ビジネスや恋愛など様々な人間関係を築く際に役立ちます。
返報性の法則は「誰が」「どのような方法で与えるか」で効果が変わる
返報性の法則の使い方について、より深く理解するために参考になる動画をご紹介します。
この動画で学ぶべきところは、返報性の法則といえども、ただ与えるだけではダメということです。
内容は、「知らない人にいきなり挨拶するとはたして返してもらえるのか?」を検証したもの。
結果は1/4程しか挨拶を返してもらえませんでした。これはあまり良い結果ではありません。
挨拶を返してもらえなかったのには次の理由が考えられます。
- 地味な若い男性だった
- 声が小さく、陰気だった
- 場所がショッピングモールだった
- 隣で別の男性がカメラで撮影していた
その結果、「この人だれ?不審者かもしれない」と警戒されたためでしょう。
挨拶するのが子どもや女性でしたらもっと反応が良いはずですし、もっと元気よく挨拶したり、(失礼ですが)イケメンなら好感度が上がるので結果は異なります。
返報性の法則は状況に応じて、正しい使い方をすることで効果を発揮する心理学です。
<参考動画>
知らない人に挨拶すると挨拶は何人から返ってくるのか!? ハルTVオンデマンド
返報性の法則と一貫性の法則との違い
返報性の法則には、必ずといっていいほど一貫性の法則(一貫性の原理)がセットで紹介されます。
どちらも行動や結果は似ているので混合されやすいのですが、返報性の法則は相手からのお返しに期待するのに対し、一貫性の原理は自分の筋を通すので、過程が全く違います。
もう少しわかりやすいように、一貫性の法則の定義と具体例とビジネスで活用されている手法をご紹介しましょう。
一貫性の法則とは
人は自身の行動、発言、態度、信念などに対して一貫したものとしたいという心理が働く。この心理を「一貫性の原理」と呼ぶ。この心理の根底には、一貫性を保つことは社会生活において他者から高い評価を受けるという考え、複雑な要因の絡み合った社会生活での将来的な行動決定においてより簡易に行動を決定することができるなどの要因があるといわれる。
[フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』]
要約すると、人は一度決めたことは貫きたいと考える。たとえ決定が間違っていたとしても正当化する傾向があるということです。
一貫性の法則を理解することで、返報性の法則がより効果を発揮します。
なぜなら相手に対してのアプローチの仕方は異なっても、望む結果は同じだからです。
一貫性の法則の具体例
- つまらないドラマでも途中まで見たから最終回まで見続けよう。
- ほとんど読んでいないけれど、毎月買っている週刊誌だから今月も買おう。
- 宝くじを買う前は「当せんするわけない」と考えていたのに、購入後は「当たりそうな気がする」という気持ちになる。
ビジネスでよく使われる一貫性の法則の手法
「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」と呼ばれる手法があります。
まず顧客に対して小さなお願いをします。ここでのポイントは断られない簡単な内容にすること。受け入れられたら、少しずつ要求を大きくしていき、最後に本命の商品をセールスします。すると顧客は普段なら断るようなことでも受け入れてしまいます。
実際に営業の電話で多いのが「3分で済むので話だけでも聞いてください、特別に無料で〜」。これは最初の小さなお願いに相当します。
「3分だけなら聞いてみよう。無料なら損することはないはず」こう考え、話を聞くと結局3分では終わらず、巧妙に有料サービスを勧めてきます。
返報性の法則を4種のタイプに分類
返報性の法則は、何をしてもらうかによって返すものが変わってきます。決していいことばかりではありません。
今回はわかりやすいように4つのタイプに分類しました。
好意の返報性
「好きになってもらうと、こちらも好きになる」心理のことです。
これはなにも恋愛に限ったことではありません。受けた好意に対して好意でお返しするという意味で人間関係全般に当てはまります。
例えば職場や友達ともっと仲良くなりたいなら、まず相手に興味を持って好きになります。すると、好意の返報性が働いて相手もあなたのことを良い意味で意識し始めるので、職場環境の改善や友達付き合いもうまくいくでしょう。
敵意(悪意)の返報性
好意の返報性とは真逆の心理です。
敵意や悪意を他人に向けると、やがて自分に返ってきます。
「やられたらやり返せ、10倍返しにしてやる」こういう考えはまさに敵意の返報性です。
何の生産性もありません。ただ皆が不幸になるだけですので、敵意は他人に向けないようにしましょう。
譲歩の返報性
相手が譲歩してくれたことに対して、同じように譲歩しようという心理のことです。
好意の返報性と似ていますが、交渉術としてはこちらの方が効果的。
違いは好意の返報性が「好意に対してのお返し」に対して、譲歩の返報性は相手が「譲ってくれたことへのお返し」です。
したがって、譲歩の返報性は相手に貸しを作ることが可能。
具体的には後ほど、ビジネスにおける返報性の法則で解説します。
自己開示の返報性
相手が自己開示をしてくれた時、同じようなことを打ち明けなければならないという心理です。
気さくな人の周りにはたくさんの人が集まってきます。それは無意識に自己開示の返報性を活用しているからです。
具体的な例としては、中学生や高校生の頃、「友達に好きな人を告白されたら、自分も好きな人を教える」という甘酸っぱい経験があるのではないでしょうか。
開示された内容によって、それに見合った秘密を暴露しなければならないという心理が働きますので、コミュニケーションを効果的に取る方法として有効です。
身近な例をご紹介
心理学は抽象的で分かりにくいかもしれません。
そこで、身近にある例を3つご紹介します。ほとんどの人が経験したことがある例ですので、「なるほど、そういうことだったのか」と、腹に落ちるでしょう。
スーパーの試食コーナー
好意の返報性を活用した代表的な例がスーパーやデパート、パン屋さんの試食コーナーです。
無料で食べて、「はい、さようなら」とは言いにくいですよね?
それが美味しかったら尚更です。無料で食べたからには少しでも買わなかればいけないという心理が働きます。
どうしても買いたくない時は、試食しないか、試食前に絶対に買わないと決めておいた方がよいでしょう。
商品サンプルや無料プレゼント
新製品やプロモーション中の商品など、商品サンプルを無料でいただく機会はよくあります。サンプルどころか、無料で商品をプレゼントとしていただくことも。
こちらも好意の返報性の心理でその商品に興味を持ったり、販売会元(製造元・店舗)に感謝以上の感情が芽生えたりします。
ただし、直接手渡しをしないと効果は半減します。
誰からもらったというのが重要になるので、郵送によるプレゼントはお勧めしません。
商品や販売元(製造元・店舗)の紹介を交えながら渡してこそ、効果を発揮します。
バレンタインデー
バレンタインデーでチョコレートをもらったら、ホワイトデーにお返しをする。
しかも、恐ろしいことに3倍返しといわれているほど。これは好意の返報性の心理からくる行動です。
芸能人や超モテモテのイケメンなら話は別ですが(そういう方は誰にもらったか把握していないことが多いので)、一般的には返さないとバツが悪くなります。
バランタインデーの始まりは、洋菓子店のモロゾフ(現在のモロゾフ株式会社)が昭和11年(1936年)に提唱したといわれていますが、好意の返報性をうまく利用したのはずいぶん後のことです。
【返報性の法則】活用方法
返報性の法則をどのように活用すればよいかご提案します。
あらゆる場面で有効な「型」をご紹介しますので、自分に合った目的に置き換えて活用してください。
ビジネスにおける返報性の法則
ビジネスでは好意の返報性と譲歩の返報性を折り混ぜて活用すると効果的です。
先ほどご紹介した身近な例のように先にプレゼントや奉仕をして相手に貸しを作り、譲歩の姿勢を見せながら商品やサービスを販売する。
このシンプルな型をアレンジすることで、どんなビジネスにも応用できます。
損して得取れとはよくいったものです。
プレゼントや奉仕は大きければ大きいほど、お返しも相応に期待できます。
しかし相手のキャパシティを超えると逆効果ですので、ちょうどよい塩梅の見極めがビジネスの是非を決めるポイントになります。
好意の返報性は恋愛にも有効
恋愛はドラマや映画のようにはいきません。
同時にお互いを好きになることは不可能に近いです。
- どちらかが先に好きになる。
- アピールすることで相手に意識してもらう。
- やがて相手にも好きになってもらいお付き合いが始まる。
もちろん例外はありますが、大抵はこの流れです。
好意の返報性は②のアピール部分で大きな役割を担っています。
ただし、好意を猛烈に伝えることで同じ熱量の好意が返ってくることは稀でしょう。普通に考えて重すぎます。
相手の気持ちを考え、本当に望むことを理解した上で負担にならないようなプレゼントや奉仕をすることが成功の秘訣です。
返報性に関する論文|〝説得〟コミュニケーションの研究 : Self Persuasion『自主説得』の考察
これまで返報性の法則に関する研究は盛んに行われてきました。
今回はその中でも比較的わかりやすい論文をさらに噛み砕いてご紹介します。
こちらの論文には、説得心理について、説得は『返報性の原理』と『一貫性の原理』の『二つの原理』が支配すると記述されています。
しかし、この『二つの原理』は「だまされた」「のせられた」というような「不本意な感情」を引き起こすリスクが伴うとも。
論文では、不本意な感情を引き起こすリスクに対する解決策として、『自主説得』という手法を提唱されています。詳しくはこちらをご覧ください。
確かに返報性の法則は万能ではありません。当記事の後半にご紹介しているNG例などはこの論文内容に当てはまっています。
ですがうまくいくことも事実。
未だにこの『二つの原理』が現役のビジネスシーンにおいて頻繁に使われているのが証拠です。
リスクを避けるためにも、正しい知識を身につけ活用することが重要と心得ましょう。
返報性の法則が学べるおすすめ本
返報性に関する本は関連本も含めると数多く出版されていますが、大元を辿ればこの一冊という伝説的な書籍をご紹介します。
- 影響力の武器―なぜ、人は動かされるのか―
- ロバート・B・チャルディー二 著 社会行動研究会 訳
- 価格:2,970円(Amazon)
- 評価:4.5
初版は1991年であるにもかかわらず、「人の行動は30年前から変わっていない」と、今も売れ続けている名著です。
現在発売されているのは第5版(日本語訳は第三版)で、現代に合わせた内容に加筆、修正されさらに進化しました。
返報性の法則はもちろん、一貫性の法則など人間が行動する心理が一通り理解できます。
3cmほどある分厚い本ですので驚かれるかもしれませんが、安心してください。
本を読み慣れていない方でもわかりやすいように書かれていますので、2時間程で読み終わります。
しかし内容が非常に濃いので、一度読んだだけで全てをインプットするのは困難です。必要に応じて何度も読み返すことで人間の行動心理がより深く理解できるでしょう。
返報性の法則が効かないことも|NG例
返報性の法則を理解し、活用することで多大なメリットの恩恵を享受できます。
しかし、使い方によっては効果がない場合も。
よくある失敗をご紹介しますので、同じ行動を取らないように注意してください。
見返りを求める
見返りを求めてはいけないというのは、返報性の法則に矛盾するようですが、過度な期待は禁物です。
こちらが与えたものの価値と、相手が感じた価値にズレが生じることもよくあります。
「奮発してあげたんだから、同じかそれ以上のお返しがあるはず」と考えていると、結果次第で相手を責めることになります。
これは恋愛の失敗によくあるパターンです。そうならないよう、謙虚な気持ちを忘れないようにしましょう。
節度を超えた行為
相手からの見返りを期待するあまり、ついやり過ぎてしまうことがあります。
例えば、ビジネスの交渉にプライベート深くまで踏み込んだり、恋愛に家族を巻き込んだり・・・。
たとえ相手にメリットがあることでも、節度を超えた行為は迷惑です。結果、嫌われて避けられる可能性があります。そうなると、ビジネスも恋愛も大失敗です。
最悪の場合、詐欺や脅迫と疑われることも。
相手に敬意を払い、常識の範囲内で行動しましょう。
相手の状況を考えない
相手はお返しできない状況で、見当違いのプレゼントや奉仕をしても困らせるだけです。
例えば、リストラ中の会社に無料求人の営業をかけたり、結婚している会社の同僚に本気のプレゼントをあげたり。
そんなことをすれば、次のような結果になることは明白です。
- リストラ中の会社→断腸の思いで社員をリストラしているのに何いってるんだこいつ。
- 結婚している会社の同僚→不倫?いや無理無理!勘弁して。仕事やりにくいよ。
相手のことをリサーチして状況を理解してから行動しましょう。
(この例は一部の経営者や不倫願望のある方は例外とさせていただきます)
正しい使い方で仕事や恋愛の悩みを解決しよう
返報性の法則は人がもつ抗えない心理です。
使い方によっては薬にも、毒にもなります。
誤った使い方をすると、「見返りを求める嫌な人」という悪い印象を与えてしまいます。
正しい使い方を理解した上で実践することが大切です。
心理学である返報速の法則を活用し、ビジネスで同僚より優位に立ち、さらには恋愛も成就させて幸せな日常を手に入れましょう。