特に親しくない仕事相手から「いつもお世話になってます」とメールが来たら、急に距離を詰められたような違和感がありませんか?
それは、この文章が「い抜き言葉」になっているからです。
い抜き言葉は、カジュアルな口語表現として広く浸透しています。しかし、フォーマルな文章で使うのはNG。
もちろん、ライターが仕事で使うと修正対象になります。
この記事では、うっかり使いがちな「い抜き言葉」を解説します。見分け方やチェックツールも紹介するので、ぜひご覧ください!
い抜き言葉の例
い抜き言葉は「~しています」とするべきところで「~してます」と省略する表現です。
- 「今日は休んでます」(います)
- 「まだ返信してません」(いません)
- 「仕事をしてる」(している)
- 「読書はしてない」(していない)
- 「痩せてきてる」(きている)
音読するとわかりますが、い抜き言葉は会話でよく使用します。
さらにカジュアルな会話になると、”てにをは”を省いて「今日休んでます!」のようにしますよね。
「ら抜き言葉」と違い、い抜き言葉は自然な口語表現・カジュアルな文語として広く受け入れられています。
しかし、会話で使うからといって、TPOを考えずに使ってよいわけではありません。
- ライティングの仕事
- ビジネスメール
- 目上の方と話すようなフォーマルなシーン
上記でい抜き言葉を使うのはNGです。
い抜き言葉の見分け方
い抜き言葉は、あまりに馴染み過ぎていて、意識していないとつい使ってしまうのが厄介です。
とはいえ句読点の近くにしか出現しないので、簡単に見分けられます。
「おります」で変換できるかチェック
- 句読点(「、」「。」)を探す
- 前方の言葉が「おります」に変換できるかチェック
- 変換できたら「い」抜き言葉に注意
「いつもお世話になってます。
先日ご質問いただいた件について、ちょうどよい資料があったのでお送りします。
鍵を掛けてますので、次に送るパスワードで解除してください。
よろしくお願いします!」
↓(「おります」で変換)
「いつもお世話になっております。
先日ご質問いただいた件について、ちょうどよい資料があったのでお送りします。
鍵をかけておりますので、次に送るパスワードで解除してください。
よろしくお願いします!」
「おります」で変換できるのは2カ所だけです。確認すると、い抜き言葉になっていますよね。
- 「お世話になってます」→「お世話になっています」
- 「鍵をかけてますので」→「鍵をかけていますので」
「おります」で言い換えられる場所を探すと、効率的にい抜き言葉をチェックできます。
ただし、い抜き言葉に「い」を入れても敬語にはなりません。
- 口語:「お世話になってます」
- 丁寧語:「お世話になっています」
- 敬語:「お世話になっております」
きちんとした敬語を使えば、い抜き言葉は出現しないといえますね。
注意!文章校正ツールでは漏れやすい
ライターは敬語で文章を書きません。そのため、い抜き言葉を使っていないか納品前のチェックが必要です。
い抜き言葉チェッカーなら、無料の文章校正ツールPRUVが比較的高い精度で拾います。
(出典:PRUVチェック結果より)
ただし、抜けもあります。自分でも忘れずチェックしましょう。
い抜き言葉はカジュアルな口語表現
い抜き言葉は、間違った日本語ではありません。
小説のセリフや吹き出し内の文、インタビュー記事などでは、人物の個性を出すために口語表現を使います。
- 「最近、読書をしていないな」
- 「最近、読書してないな」
どちらに親近感を持つかというと、下のセリフのはずです。特に”てにをは”を省いた文章なら、い抜き言葉のほうが自然に聞こえます。
地の文ではNGですが、使う箇所に応じて上手く使い分けましょう。
また文章で使いがちな口語表現に「さ入れ言葉」があります。ライターなら、覚えておいて損はないですよ!